【コンサート開催録】2021.11.21 足立真由さん

 足立真由さんはピアナリウムに何度かいらしてくださり、今回、弾いてくださることになりました。清楚で、真面目な性格が演奏にも反映されていました。

事前のリハーサルで収録したメッセージ動画を、ご予約下さった方やお誘いした方々に送ると、多くの方から「癒されました」「動画見ました。とても温かくやさしい音色でこころ穏やかになれそうです」などの反響がありました。

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プログラム

J.S.バッハ:幻想曲とフーガ イ短調 BWV904
ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番 ホ長調 Op.109
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ショパン:ポロネーズ第7番 変イ長調 Op.61 「幻想ポロネーズ」
ショパン:ノクターン第9番 ロ長調Op.32-1
フランク:前奏曲、コラールとフーガ ロ短調 M.21 

開演とともに、足立さんのご挨拶がありました。
「グロトリアンのあたたかい響きに合うのではないかと思い、精神世界・内面を求められる、深まった秋に合わせたプログラムを組んでみました」というお話をされてから演奏が始まりました。

J.S.バッハ(1685-1750):幻想曲とフーガ イ短調 BWV904(1727年以降)
個別的に伝承された作品では名作のひとつで、オルガン風のどっしりとした風格の作品。幻想曲とフーガは独立して扱われたが、あとから組み合わされた可能性がある。
幻想曲は4声部(時に5~6声部)の旋律がゆったりと絡み合う。フーガは息の長い主題の後、別な主題が表れる二重フーガで、二つが縦に合わさり緊張感をもったままクライマックスを築く。
バッハの作品のなかでも高度な技術を要するであろうこの作品を、足立さんはしっとりと、そして各声部をくっきりと歌い、終始安定して聴かせてくれました。

ベートーヴェン(1770-1827):ピアノソナタ第30番 ホ長調 Op.109(1820年)
フランクフルトの慈善家アントニー・ブレンターノの娘マキシミリアーネに献呈。  
Op.109 の第3楽章にはバッハの『ゴルト ベルク変奏曲』なしには生まれなかったと思われる個所が、数多くみられる。

作曲家矢代秋雄が 1961 年に書いたソナタについて「自 分は作品 109 に精神的な影響を強く受けた。なぜなら、作品 109 はベートーヴェンの作品の中で、最も コンパクトにその精神・その技術を集中させた作品だからである」と語っている。

野平一郎「ベートーヴェンのピアノソナタ 第30番の演奏解釈」

軽やかなテーマと美しいアルペッジョが対照的な第1楽章、厳格でスピード感のある第2楽章、そして、第3楽章はベートーヴェンがドイツ語で「歌うように、心の底からの感動をもって」と指示した美しい主題と6つの変奏曲からなり、第6変奏は主題が上も下もトリルの響きに包まれ、最後は静かに回想され、しみじみと曲を閉じる。ミサ・ソレムニスの作曲のあいだを縫って、ディアベリ変奏曲、第9交響曲と同時期にとりかかり、さらに作品109,110,111の最後の3曲のピアノソナタを完成させた。

ショパン(1810-1849):ポロネーズ第7番 変イ長調 Op.61 「幻想ポロネーズ」(1845-46年)
ショパン晩年の孤独感がにじみでている傑作。フランツ・リストは「ショパン晩年の作品は熱病的苦悶の色合いをおびている。この曲はいたるところ、突然の変動に傷つけられた深い憂愁や急な驚きに乱された平安や、忍びやかな嘆きで彩られている。この痛ましい幻影は芸術の域をこえている」と評した。

ショパン:ノクターン第9番 ロ長調Op.32-1(1836-37年)
優しさと夢とはかなさがしっとり歌われるが、曲の最後は転調とともに、オペラのアリアのようなコーダが劇的に奏される。

フランク(1822-1890):前奏曲、コラールとフーガ ロ短調 M.21 (1884年)
19世紀後半のフランスではサン=サーンスやフォーレらの作曲家と「フランキスト(フランクの仲間たち)」と呼ばれた作曲家が大きな二つの流派をなしていた。この作品は、オルガン奏者としての経験を反映し、バロック時代の表現が取り入れられていて、同時にフランク特有の半音階的な和声が活かされ、独特の内面的な情熱を秘めた作品。フーガにはコラールの4度の下降旋律が現れ、さらに前奏曲で用いられた分散和音の表現も入り、豊かな音の構築物に仕上がってゆく。

足立さんは粛々と丁寧に主題を紡ぎ、荘厳でゆるぎない世界を表現してくださいました。

演奏が終わると拍手にこたえて、
「庭にはトナカイがいて、まもなく季節は冬になるので、アンコールには、 
ドビュッシーの『前奏曲集 第1巻から第6曲”雪の上の足跡”』を演奏いたします。」
とお話されました。

しんしんと降り積もった雪の静けさに繰り返される足跡のリズムが、冷たいはずなのに足立さんの鍵盤へのタッチが絶妙かつあたたかく、ぜひ印象派の曲もお聴きしたいと思いました。

全てのプログラムにおいて、曲の始めは息を吐いてから弾き始めるのが足立さんのルーティーンのようで、同時にお客様も集中されるのでした。

参考文献:「バッハ全集 第12巻 チェンバロ曲」小学館、「最新名曲解説全集 第14巻、第15巻」音楽之友社、CD「フランク:ピアノ曲集/ニコライ・ルガンスキー」より解説

お客様の感想

素敵なピアノのサロンコンサートを聴かせていただき、どうもありがとうございました。Grotrianのピアノの響き、素敵でした。あたたかい響きですね。
足立さんの演奏も素晴らしかったです。あんなに細いのに迫力のある音でした。特にフランクが素晴らしかったです!
あのピアノでシューマンやブラームス等のロマン派も聴いてみたいと思いました。
またお声かけてください!どうもありがとうございました。
 (教会のオルガニストKさん)

正直、ピアノの生演奏を初めて聴いたので判断材料が無いんですが、とても居心地は良かったですよ。実はピアノを弾いてみたいんです。
建築家のRさん(終演後、GROTRIANの構造について尋ねていました)

いつの日か、ピアナリウムで足立さんの即興のピアノをバックに踊りたいです。(足立さんの同級生のダンサー)

最前列で聴かせていただきました。
足立さんの息遣いも感じられ、ベートーヴェンのソナタ第30番では床を通して振動が伝わってきて、体全体で、皮膚からも足立さんのピアノを堪能しました。バロック~古典~ロマン派と重厚なプログラムで素晴らしい演奏を聴かせてくださり、今後もますます楽しみです。

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