日置さんは前日にリハーサルにお越しになりました。
お越しになるまで、それまでのメッセージでのやり取りでは大変丁寧で几帳面な大人のイメージでしたが、お見えになったのは、お若く可愛いお嬢さんで驚きました。
ホールに入り、GROTRIANを目にすると、
「ドイツでも弾いたことがなく、GROTRIANを弾くのは初めて」とお話ししながら、ピアノに向かい、笑顔で「弾きやすいです!」と仰り、リハーサルが始まりました。ほとんど休む間もなく、4時間弾いていらっしゃいました。
時折、同じ所を繰り返し弾き、素人には違いが分からない細かい音色を一音一音確かめ、繰り返されていました。
このGROTRIANとの緻密な調整、音作りが翌日のコンサートに繫がるのでした。
リハーサルが終わる時には、外は暗く、どこかで花火の音がしていました。
プログラム
モーツァルト: ピアノ・ソナタ第12 番 ヘ長調 K.332第1 楽章 アレグロ
第1 楽章 アレグロ
第2 楽章 アダージョ
第3 楽章 アレグロ・アッサイ
シューマン: 8つのノヴェレッテン Op.21より
第1 番 ヘ長調 はっきりと力強く
第2 番 ニ長調 きわめて速く、華やかに
第6 番 イ長調 とても生き生きと、たくさんのユーモアをもって
第8 番 嬰ヘ短調 とても快活に
ブラームス: 創作主題による変奏曲 ニ長調 Op.21-1
クララ・シューマン: 音楽の夜会 Op.6より 第2 番 Notturno
ショパン :
ノクターン第20 番 嬰ハ短調 (lento con gran espressione)
幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
当日は、モーツァルトのピアノソナタ12番の軽やかな音色で始まりました。
モーツァルトが終わり、ご挨拶がありました。
プログラムについて、前半はユーモアのある作品を選曲されたそう。
2曲目のシューマンの8つのノヴェレッテン、作品21より。
ノヴェレッテンとは、ドイツ語で短編小説と日置さんからご説明があり、
そして、シューマンがクララ・シューマンと愛を育んでいた頃の作品とのことでした。
15分の休憩後、後半が始まりました。
後半は、翳りのある作品を選ばれたそうです。
ブラームスの創作主題による変奏曲、ニ長調、作品21-1 輝く高音
クララ・シューマンの音楽の夜会、作品6より2番のテーマのメロディーが、シューマンの8つのノヴェレッテン、作品21より8番のクライマックスと同じメロディーだそうで、クララとシューマンの愛を感じ、PianariumのGROTRIANも喜んでいるに違いありません。
そして、ショパンのノクターン20番。ゆっくりと、もの憂げな旋律。
美しく流れる旋律は、言葉になりません。
最後は、幻想ポロネーズ、ショパンの晩年の孤独感と苦悩を表現した曲で、
日置さんは、聴き手が涙する程の美しさと説得力で弾きあげてくださいました。
クライマックスは壮大に広がり盛り上がり、最後は高音の一音でおわったのですが、
その一音が天を突き抜けるような音でPianariumに響きわたりました。
アンコール
シューベルト:即興曲90-3
アンコールは、涼やかな曲をということで選ばれました。
こちらも淡々と流れるメロディーが美しく、シューベルトも次の機会に聴きたい!と感じさせられました。
一つ一つの粒が揃い、終始、落ち着き圧巻の演奏。
終演後、ご本人はすごく緊張したと仰っていました。
そんな表情は、全く感じませんでした。
謙虚で周囲に気を配り、几帳面で控え目ではあるがご自分の意見もしっかりお持ちのお人柄が演奏にも表れていました。
ご家族は、名古屋から早朝よりお車で5時間かけてお越しくださいました。
日置さんは普段はお一人で名古屋にお住まいで、ご家族とは別にお住まいだそうで、
久しぶりにご家族5人が揃った日だったそうです。
妹さん達と微笑ましい場面がたくさんあり、御姉妹の仲の良さを感じました。
お母様は、間違えないかはらはらしながら聴いていらっしゃいましたが
「素晴らしいピアノのお陰で、素晴らしい演奏会でした。」と、仰ってくださいました。
お父様が、寡黙ながらも、会場から出られる時に、
一枚ひと美さんのお写真を撮られていました。
とてもアットホームなご家族で、帰られた後も、
しばらくその雰囲気はPianariumに漂っていました。